私のニックネームはILYAイリヤ)。元はフランス語を組み合わせたもので、意味は「存在」という哲学用語です。自分なりに「これは私」といえるような作品を作りたいと思っているんです。

 いわゆる
ビデオアーティストです。ビデオで撮影した素材をパソコンの編集ソフトで加工し、自分で作曲した音楽をつけてビデオクリップに仕上げます。上映されるのはクラブが多いですね。そういう時は踊りやすいようにアップテンポの激しい曲にします。ほかにコンサートの前の前座みたいな形でとか、ブティックの店頭で流し続けたりとか。あと、まじめな美術館で作品展をしたこともあります。その時は環境音楽の中に不協和音を入れた音楽にしました。

 最近になって取り組んでいるテーマは
自殺
 今、自殺がすごく増えているじゃないですか。それも、思春期の若者とか失業した中高年とかいった昔から自殺が多い世代ではなくて、あらゆる世代の自殺が増えているようなんです。彼らに共通する何かが見つかれば、と考えています。

 なんて偉そうに言ってみましたが、本当はあるプロモーターの方から与えられたテーマなんです。「自殺志願者の最後の姿を撮影しろ」って。そんなことできるんだろうか。最初はやはりそう思いました。一体、どこに自殺志願者がいるの? 誰がそんなところを撮らせてくれるの? でも、意外に簡単だったんです。きっかけはインターネットでした。「自殺」や「死」という項目で検索し、それらしい人を絞り込んで連絡を取ってみると、むしろ向こうの方から撮ってくれと言い出したんです。最初はもちろん自殺をやめるよう説得しました。でも、彼らの意志は堅く、私の言ってることはきれいごとにしか聞こえませんでした。私は客観的に撮ろうと心がけました。私に「自殺」というテーマを与えたプロモーターが言いました。
あなたがビデオを回そうと回すまいと、その人は死んだのよ。だったらあなたは自分の仕事をなさい、と。私は生々しさを消すためにエフェクトをかけ、派手な音楽をつけました。これはクラブで流しました。お客さんは大喜びでした。もっと反感を買うだろうと思っていたのに。私のところにくるのは絶賛のメッセージだけ。サブ・カルチャーの雑誌で取り上げられ、人気はさらに上がっていきました。さらに、自殺志願者からの情報も多く寄せられるようになりました。これはOKなんだ。死のうとする人は見られたがれ、生きようとする人は見たがっている。そういう時代なのかもしれません。「生きようとする人」ではなくて、皆がまだ死のうとしないだけなのかも
 私はさらに、自殺志願者にビデオを向けようと思いました。私のしていることは残酷なことではなく、いつの時代にもよくある自殺に立ち会っているだけなんだ、と。


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