今ではない、ここではない世界で・・・。
| マレヒトなる煽動家に率いられた急進派の一団は、政府与党による生産活動縮小案に反対して独自の経済体制をもつ都市国家を形成、マレヒトを元首として我が国からの独立を宣言した。我が国はこの独立を承認した上で、かの国との国交を断絶するものである。 |
 一人の兵士が装甲服に身を包み、国境線を見張っている。といっても、緊迫した戦闘行為はここにはない。ただ国境線の向こうから敵国の指導者マレヒトの演説が電波にのって流れてくるだけ。兵士は任務としてそれを傍受している。狂信的な独裁者の言葉にうんざりしながら。
宿舎に戻るとそこには一体の女性型アンドロイドがいる。政府からあてがわれた慰安用のものである。緑色の瞳以外、外見上奇異なところは何もないイリヤ６型のいる静かな暮らしと、国境の砂漠地帯での任務。それが兵士の生活のすべてだった。
 ある日、軍の役人が宿舎を訪れる。軍の上層部に人事異動があり、方針が若干変更されたのだった。それはイリヤ６型のバージョンアップであり、役人はイリヤ６型の言語能力を改良して帰っていく。外見上は何も変化しなかったイリヤ６型。兵士の生活はそのままつづくはずだったが・・・。
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