ロケハン(山道編)

 マンションの一室とともに映画のメイン舞台となるのが、車で行く山道。けものみちのような山奥ではなく、緑の木々の間を舗装された2車線の道路が走っている、そんな光景が欲しかった。ロケするのに無理のない距離の東京近郊でそれらしい所をリストアップしてみる。ここで大きな問題を発見。八王子や甲府あたりのそれらしい道では夏場には暴走族やローリング族が出没するらしいのだ。もう少し遠方まで足を伸ばしてみないといけなさそうだ。

 製作の陶久氏より、おいしい情報がもたらされる。群馬県吾妻郡中之条町が映画製作に協力してくれる町だというのだ。ここでは伊参スタジオ映画祭が開かれていて、『眠る男』『月とキャベツ』も町の協力で撮影されている。さっそく町役場に交渉。「山道を探しているんです」と聞いたら、「ほとんどが山道です」との答え。しかも「暴走族はいません」。期待に胸膨らませて、2003年7月19日、車でロケハンに出発。
 撮影の野崎氏が同行、運転は『イリヤ』の音響だった長崎氏。しかし、日にちがまずかった。3連休の初日だったため、関越道は12キロの渋滞。高速に乗らずに行くが、大宮から5時間半もかかった。それでもなんとか中之条町に辿り着き、通り掛かる人に道を聞きながら伊参スタジオを探す。この町の人たちに道を聞くと「次の角を上に進む」と教えてくれる。右か左か、ではなく、上か下か。さすが山岳民族。
 伊参スタジオは廃校になった学校を改造した建物。中之条町を舞台にした映画の資料が展示され、宿泊もできる。管理人のおじさんに山道情報を教わり、さっそく山道探し。『月とキャベツ』で山崎まさよしが自転車で通るシーンを撮ったことから「山崎まさよしの坂」と呼ばれる、きれいなS字の坂に行く。我々もここで撮影することに決定。地元に逆らい、我々は「まんたのりお坂」と呼ぶことにする。その他にも、いい山道をピックアップできて、収穫大。

 伊参スタジオに戻って1泊。管理人のおじさんは夕方に帰宅し、朝まで我々3人だけ。もともとが学校なので、教室に布団を持ち込んで寝る形。「1人1部屋にしようか」と提案してみるが、怖いので撤回。とにかく、静かで暗い。耳がジーンとなるほどの静寂。部屋の電気を消すと布団まで戻れないほど真っ暗。でも、トイレと風呂は新築のため、きれい。調理場も充実。とても楽しいロケツアーになる・・・と予見されるのでした。

やっぱり、自然の緑は心落ち着くなぁ。。。(撮るのはゾンビ映画だけどね)

伊参スタジオ

期待どおりの山道

まんたのりお坂(別称:山崎まさよしの坂)