キャスティング

 主人公は1組の夫婦。この配役は企画段階から頭にあった。妻役はあしかがあや氏。このクイーン・オブ・ゾンビ(勝手に命名)をどこで発掘したかというと、あれは私が某映画学校で事務の仕事をしていた頃。夜の事務室で一人で留守番していたら、誰もいないはずの教室からピチャン、ピチャンと水の滴る音が‥‥。恐る恐る教室を覗くと、濡れた黒髪を垂らした女が「ポスターが1枚、ポスターが2枚‥‥」ヒュードロドロドロ〜 というのはありがちなホラー的脚色で、実際はただ単に「芝居のポスターを貼らせて下さい」と持ってきたのが、彼女。その学校の演劇コースの卒業生だった。ポスターの芝居を観に行ったら、偶然にも前作『イリヤ』の主演女優・荻原志乃氏の知り合いだった。見た目からして人間以外の役をやってもらいたい女優だ。(ほめ言葉だよ)

 夫役は、主に松梨智子監督作品で怪演を見せるまんたのりお氏。実は彼はプロの照明・音声マンでもあり、NHKのドキュメンタリー等を手掛けている。『イリヤ』には照明として参加してもらい(クレジットは荻久保則男)、その奇異な存在感が面白かったので1シーンだけ出演もしてもらった。今回は、人生に失敗した男、何度やり直しても成功するはずもない男を演じてもらいたかったので出演依頼。本人も「コンプレックスには自信があります」と妙な確信を抱く。

 その他の配役はすべて、以前出演してもらった役者さんにお願いした。過去の全作品に出演している満田幸一郎氏、前々作『マレヒト』の主演だったなにわ天閣氏、『イリヤ』でリストカッターの女性を演じた遊上良子氏、それに今回は声のみの出演の岡田和子氏(『イリヤ』では主人公の恋人の母親役)。やはり一度組んだ役者だと、その役になった時の姿が想像しやすい。

 主役の夫婦2人はほとんど出ずっぱり。「あしかがあや」「まんたのりお」とひらがなの名前が並んでしまったけど、別にバカップルの役ではないよ。その後に来る名前が「なにわ」だけどね。こちらはバカ映画界の重鎮なのでした。

    

各キャストのプロフィールは「キャスト・スタッフ」